大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 昭和30年(ラ)57号 決定

抗告人 岩田ミワ(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由は、「被相続人大村フミは昭和二十五年一月○○日郡山市○○○町○○番地自宅で死亡し申立人はその相続人である。元来申立人は昭和二年八月○○日被相続人とその夫大村勝義との両名と養子縁組をして同日その旨の届出をしたから被相続人の養子である。尤も被相続人は昭和五年十月○日夫勝義と協議離婚し同日その旨届出でたが右届出は夫勝義の負債を免れるためで被相続人は婚家を去らず勝義と同棲生活を続け同人等間に昭和五年九月○日出生した二男正義及び養子たる申立人とも同居していた、右夫勝義は昭和七年三月○日死亡したが被相続人はその死亡届を為し同十五年三月○○日勝義の家督相続人たる戸主大村正義の母として大村家に親族入籍の手続をした、被相続人は昭和二十年一月○○日、申立人と訴外岩田治郎との婚姻届出に際し戸主兼母としてこれが同意を拒否したが申立人は右婚姻によつて家を去つたものではない、従つて被相続人の前記離婚により養親子関係が消滅したとしても右被相続人の親族入籍により被相続人と申立人との間に於ては従前の身分を回復して養親子関係が復活したのである。仮に然らずとしても申立人は被相続人に対しては家附の継子であり、被相続人は他家から入籍して昭和二十年十一月○○日届出により大村家の戸主となつたものであるから民法附則第二十六条により申立人は被相続人に対して嫡出子と同一の相続権を有するものである、被申立人両名は昭和二十五年一月○○日被相続人と夫婦養子縁組の届出をしたが、当時被相続人は病体であり届出書の署名押印を自らしたものでないから右届出従つてその縁組は無効である、以上の次第なるにより抗告人の申立を却下した原審判は違法であるからこれが取消しを求めるため本抗告に及んだ」と云うにある。

よつて案ずるに当裁判所も亦原審と事実の確定並びに法律判断を同じくするから原審判書理由中の記載をここに引用する。

従つて抗告人の申立を却下した原審判は相当であつて本件抗告は理由がない。

よつて民事訴訟法第四百十四条、第三百八十四条に則り主文のように決定する。

(裁判長判事 板垣市太郎 判事 檀崎喜作 判事 沼尻芳孝)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例